2019年6月21日 衆議院 本会議 屋良朝博

■麻生太郎財務大臣兼金融担当大臣不信任決議案に断固賛成の立場で討論

質問内容についての要約

麻生太郎財務大臣兼金融担当大臣不信任決議案に断固賛成の立場で討論。

麻生大臣は、国民生活に大きな影響のある年金と老後の生活費について、金融庁の審議会が厚生労働省の資料に基づいて作成した報告書の受取を拒否した。

これを受けて、政府・与党からは、報告書はもうないという、とんでもない発言まで飛び出した。

国民に必要な情報を知らしむべからずという政治姿勢は、ある意味、麻生大臣に限らず、安倍内閣に一貫したものである。

その最たるものが、辺野古移設の強行であり、まさに政権の暴走であり、安倍内閣の体質を端的にあらわしている。

議事録

198-衆-本会議-31号 令和元年6月21日 

PDFはこちら

○屋良朝博君 屋良朝博でございます。
 国民民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました麻生太郎財務大臣兼金融担当大臣不信任決議案に断固賛成の立場で討論いたします。(拍手)
 麻生大臣、どうして不信任決議案が提出されたのかおわかりでしょうか。あなたは、国民生活に大きな影響のある年金と老後の生活費について、金融庁の審議会が厚生労働省の資料に基づいて作成した報告書の受取を拒否しました。
 これを受けて、政府・与党からは、報告書はもうないという、とんでもない発言まで飛び出す始末です。もうないでは済まされません。国民に対する説明責任を全く果たしておりません。国民に真実を知らせないまま、多くの国民が老後に困窮しかねない事態にふたをしようとしている責任は、余りにも重いと言わざるを得ません。
 参議院議員選挙が迫っていることから、不都合な事実をなきものにして、嵐が過ぎ去るのを待とうという姿勢なのであれば、これは、目の前の選挙結果さえよければ、国民の老後の暮らしなどどうなってもいいという意思表示にほかなりません。国民の暮らしより目先の選挙を優先するのであれば、麻生大臣、一体何のために政治家になったのでしょうか。もっとも、年金が幾らか、自分の生活では心配したことがないと発言するくらいですから、もともと国民の暮らしに寄り添える大臣ではないことは明白であります。
 あなたは財務大臣兼金融担当大臣なのですから、本来であれば、老後の生活に必要な費用と年金財政の両方に目を配り、問題があると考えれば、一刻も早く国民にそれを知らせるとともに、改善するために全力を尽くすべきであります。
 政府の政策スタンスと異なっているという受取拒否の理由は、安倍政権に都合の悪いものは出してくるな、審議会が余計なことを言うなというおどしにも受け取れます。
 実際、麻生大臣による金融庁の審議会報告書の受取拒否は、さらなる都合の悪いもの隠しにもつながっております。
 財政大臣の諮問機関である財政制度等審議会は、十九日、建議として、令和時代の財政のあり方を示した意見書を麻生財務大臣に提出しましたが、そこでは、原案にあった文言を財務省が削除しています。原案には、将来世代の基礎年金給付水準が平成十六年改正時の想定より低くなることが見込まれているとなっておりましたが、この部分が、「マクロ経済スライドの調整期間が長期化してきた。」とされております。また、昨年の意見書で明記した、年金分野の「自助努力の促進」、この文言も削られてしまいました。
 金融庁の報告書が問題になっていること、そして参議院議員選挙が迫っていることを財務省が配慮して、こうした表現になったのではないでしょうか。
 既に報道では、審議会のある委員が、自助努力を最初は明記していたが、金融庁の報告書が話題になったので直前に削ったと明らかにしております。また、別の委員は、当初どおり、自助努力をきちんと載せるべきだとの意見も多数出たが、最終的に財務省と調整して決まったとも述べております。
 麻生大臣、あなたの報告書受取拒否が他の審議会にも影響し、厳しい現状を指摘すれば受取を拒否されるのではないか、無難な内容にしようというそんたくにつながっているのではないでしょうか。
 この財政審議会の意見書は、二〇二〇年度の予算編成に向けたものです。二〇一九年度予算で、社会保障関連経費は三十四兆円と、過去最大になっております。一般会計の約三割を占める最大の歳出分野であり、その改革は急務であります。しかし、意見書の表現を緩め、厳しい現状は指摘しないものとすることで、ひいては社会保障改革が後退するおそれがあります。
 財政審議会は、これまでにも、社会保障関連経費の伸びを抑えないと日本の財政はもたないと警鐘を鳴らしてきました。このように、政治や世論の空気に流されずに、事実に基づいて客観的に財政の指摘を受けることは重要であります。それを政治は真正面から受けとめて、国民的な議論を喚起し、将来の財政などのあり方を真剣に討議しなければなりません。
 しかし、前提となるデータを記した報告書や意見書がなきものとされたり、内容を書きかえたりしてしまえばどうなるでしょうか。危機は共有されないまま先送りされ、取り返しのつかない状況になってしまう。ようやく国民が状況を知ることになったときにはもう遅いのであります。
 民をして、よらしむべし、知らしむべからずという古来の支配原理があります。その意味は、為政者は国民をただ従わせればよいのであり、その道理をわからせる必要はないということであります。
 麻生大臣の姿勢は、まさに、国民は年金財政の詳しいことはわからなくてもいい、黙って政府・与党のやることに従えというものであります。現代の民主主義から見れば、時代おくれも甚だしいと言わざるを得ません。
 振り返れば、いわゆる森友学園をめぐる決裁文書の改ざん、隠蔽問題の際も、不十分きわまりない調査と処分で幕引きを図ろうとしました。国民に必要な情報を知らしむべからずという政治姿勢は、ある意味、麻生大臣に限らず、安倍内閣に一貫したものであります。
 その最たるものが、辺野古移設の強行です。名護市辺野古は私の選挙区であります。ことし二月に、沖縄県で県民投票が実施されました。その結果は、埋立反対が投票総数の七割を超えるものでした。民意は明らかであります。さらに、軟弱地盤の問題が明らかになったにもかかわらず、完成時期や予算の総額すら示さないまま巨大な埋立工事を強行するのは、まさに政権の暴走であり、安倍内閣の体質を端的にあらわしております。
 政策の信頼性や民意などお構いなしのその姿勢が民主主義国家にあるまじき行為であることを、なぜ理解できないのでしょうか。
 さらに、年金財政の健全性を調べる五年に一度の財政検証は、毎回六月に公表されておりますが、今回は、国民に不都合な数字が入っているから参議院議員選挙が終わってから公表するつもりではないでしょうか。
 麻生大臣、あなたの政治姿勢は、国民生活を破滅的な状況に追い込みかねない危険なものであります。これまでにも、失言と失政が数多く、既に大臣の資質に欠けることは明白でありましたが、今回の一件は、このことのみで職を辞するに余りある蛮行であります。麻生大臣が一刻も早くこの職を辞することが、国民生活を守ることの第一歩となります。
 最後に、国民民主党は、家計消費を伸ばすことができないアベノミクスにかわって、家計第一の経済政策のもと、暮らせる年金を確保するための政策を出すことをお約束申し上げ、麻生大臣不信任決議案への賛成討論といたします。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)