2020年6月18日 衆議院 沖縄北方特別委員会 屋良朝博

■沖縄の振興策について質問

質問内容についての要約

沖縄の振興策について質問。

振興策は、所得を底上げして、生活・暮らしを楽にして、幸せを最大化することが最大の目的だと思う。所得との関連性が高い製造業の底上げが不可欠だと指摘する衛藤大臣にも大いに賛同する。今現在、衛藤大臣がイメージしている。製造業を支えるための社会インフラ整備はどういうイメージか質問。

議事録

201-衆-沖縄及び北方問題に関する特別委員会-4号 令和2年6月18日 

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○屋良委員 立国社の屋良でございます。よろしくお願いいたします。
 きょうは、沖縄の振興策についてお話を伺いたいと思います。
 衛藤大臣、ことし五月十五日の沖縄復帰記念日における沖縄地元紙の新聞社のインタビューの中で、製造業の割合は他県の四・五分の一である、せめて倍近くにするなどの問題が残っているんだ、課題が残っているんだというふうな御認識を示されました。振興計画の総点検を今やっているさなかのこの大臣の御発言だけに、やはり注目度が高くて、その指摘は大きな意味を持っているのだろうと私は思いました。
 製造業はこれまでの振興策で取り残されてきた分野であることは大臣の御指摘のとおりだと思います。沖縄の製造業の、全体でもボリュームは小さいけれども、その中の四割は地元向けの食品製造になっている。そうすると、沖縄の製造業はほとんどないような状態であるというふうなことがあって。
 製造業というのは、所得を上げる役割というのがかなりありますよね。全国的に見ても、製造業が育っているところというのは所得が高いわけですね。
 総務省の統計局のデータによりますと、製造業に従事する労働者の所得分布で、全国は三百万円から四百万円未満の所得層が全体の一五%を占めている、最も多い。他方、沖縄では最も多い所得層は百万円から百五十万円と総体的に低いわけですね、全体的に。先ほども、松田委員が最低賃金のことを指摘されました。川内先生も困窮世帯の高校生のアルバイトの話をされました。
 やはり振興策というのは、所得を底上げして、生活を、暮らしを楽にしてあげて、幸せを最大化することが最大の目的だと思うんですね。所得との関連性が高い製造業の底上げが不可欠だと指摘する衛藤大臣のお考えに私も大いに賛同いたします。
 そこで、今現在、衛藤大臣がイメージなさっている製造業を支えるための社会インフラ整備、それはどういうことをイメージされているのかというのをお聞かせください。お願いします。

○衛藤国務大臣 沖縄の製造業の割合は四・五%、付加価値ベースですけれども、全国平均が二一・四%ですから、四・五分の一程度です。
 経済基盤の強化、雇用の安定、そして県民所得水準向上の点からすると、沖縄における製造業の振興は非常に重要というぐあいに認識をいたしています。
 しかし、沖縄の復帰は昭和四十七年でしたから、全国の方はほぼ工業化が終わってきたところ、いわゆる高度経済成長を終えてきたところであります。そういう意味で、沖縄は二重のいわゆる苦しみの中から今まで頑張ってきたと思います。
 沖縄振興に関しましては、やはり、そういう意味でおくれておりましたインフラ整備に力を入れましたし、それから、その後の産業振興に、リーディング産業である観光振興、いわゆる物流拠点としての動き、バイオとかあるいはIT関係とか、それから医療関係とかいう形で、ずっと今まで、四次にわたる振興計画の中で頑張ってきたところでございます。
 しかし、現実の数字はまだ、製造業、追いついていないわけでございます。
 それで、内閣府においても、沖縄の税制特区に進出した製造業等の企業については四〇%の所得控除をするなど、他県にはない高率の税制優遇措置を設けてきましたし、また、平成二十九年度に、沖縄県内で製造した製品を県外へ搬出する、先進的な取組を支援するための補助金、沖縄国際物流拠点活用推進事業を創設しまして、事業者に対する支援を進めてきたところであります。また、沖縄県がソフト一括交付金を活用して、工場の建屋を整備したり、あるいは製造業を営む企業に賃貸する事業所等への支援を行ってきております。
 これらの施策につきまして、一定程度、製造業の振興は図られてきたものと考えていますが、私としては、製造業の割合を、今の四・五%からやはり一〇パー近くまで最低でも上げないとというぐあいに思っています。
 その製造業の方は、御承知のとおり、やはり非常に賃金が安定しているわけでございます。九州におきまして、県民所得を見ましたら、私の地元の大分県は九州で二番なんですね、福岡に次いで。えっと言うんですね、皆さん。それは、昭和三十年代から進められてまいりました農工並進という中で工業化を進めてきたんですね。ただ、そのために、大きな海岸地帯を二十数キロにわたって埋め立てて、新日鉄始め昭和電工とかいろいろな企業を誘致しという中で、実は、そういう今、本当に九州で二番目ですかと言われるぐらい所得が上がってきたということで、だから、私は身にしみて、そういう安定について考えています。
 だから、それを二一%までということは無理かもしれないけれども、せめて倍ぐらいに、どうふやせるかということについて、今、実は検証中でございます。
 沖縄でどういう製造業が適しているのか、それから、いろいろなところが沖縄に一緒にベンチャー企業としていろいろなものを立ち上げるようなことは可能なのかどうか、それから物流コストの問題等も含めて、今年度、本格的な調査検討を進めているところでございます。令和二年度に、そのための調査費を二千万計上しまして、もっと具体的に進めるためにはどうしたらいいかという検討に入ったところでございます。

○屋良委員 確かに大分は一品一村が有名なところですよね。本当にそうだと思います。やはり製造業を底上げしていかないと今後の振興策は新しい展開が望めないというのはおっしゃるとおりだと思います。
 それで、大臣お触れになりました調査なんですけれども、今年度から調査費をつけて始めたということなんですが、その中身、どういったものを調査して、いつごろまでにその調査をまとめてというふうな具体的なことがありましたら、お答えいただきたいんですけれども。

○衛藤国務大臣 一応、予算規模としては、申し上げましたように二千万程度の調査費を計上いたして、今かかったところでございます。
 沖縄に適した製造業の分析、そして、その定着や集積の方策の検討、そういうことですね。まずは有識者へのヒアリング、それから先進事例の調査ということ、検討委員会を設けてスタートしたところでございます。検討委員会はまだ完全にはスタートしていない、今そういうことをやって、つくろうとしているところでございます。

○屋良委員 それは、例えばITとかバイオとか、また医療ツーリズムとか、そういった新しい分野で産業をどうやって興せるのかといったことをイメージしながらやるというふうな中身で理解していていいんですか。

○原政府参考人 今のところ、まだ検討委員会そのものが立ち上がってございませんので、確たることは申し上げにくいところでございますけれども、製造業やIT、バイオ産業等の現状をまずは分析するというようなことから始めてまいりたいと思っております。

○屋良委員 はい、わかりました。
 製造業を沖縄で興していく上で、これまでずっと足かせとなっているというふうに指摘されているのが、やはり消費地と遠い、地理的な不利性なんですね。それを埋めるためにはやはり輸送コストを何とかしないといけないというようなことがずっと指摘されているんですけれども、沖縄の輸送費はほかの地域と比べてどうなのかというのを教えてください。国交省ですか、よろしくお願いします。

○金井政府参考人 お答えいたします。
 輸送コストの話でございますけれども、例えば東京から沖縄の輸送コストですけれども、航空便を例にとりますと、十キログラム超二十キログラム以下の貨物について言いますと、航空各社の公示運賃は、羽田空港と那覇空港との間でおよそ九千円から九千五百円程度となっております。一方、本土内の輸送としての、例えば北海道を例にとりますと、羽田空港と新千歳空港との間の同様の運賃はおよそ六千五百円から七千円程度となっていると承知しております。

○屋良委員 これはかなりの差がありますね。これはスケールが大きくなればなるほど、もう製造業、成り立たぬわというぐらいの輸送コストの違いだというふうに思うんですね。やはりそれはちょっとどうにかしないと、幾らいいものを沖縄でつくって売ろうとしても、なかなかその販路が、物流コストが高いと商品の価格に上乗せせざるを得ないので、競争する最初のスタートラインから沖縄はセットバックして走らされているような状況があるんじゃないのかなと思うんですけれども。
 社会インフラ整備の中で輸送コストの低減というのは必要不可欠だと私は思うんですけれども、大臣、御所見ございましたらお聞かせください。

○衛藤国務大臣 そういうことも入れて、全体を検討しなければいけないというように思っています。そういうものがなければ、沖縄におけるどういう生産が最も適しているのか、そして、それを流通させるためにどこに持っていこうとするのかとか、そういうことも入れてやっていかなきゃいけないと思っております。
 沖縄の振興策は、前大臣もいらっしゃいますけれども、やはり四次までかけていろんな振興策を、正直言って、私も大臣になるまでは、あそこまで検討しているというか、よく頑張っているということについて実は承知いたしておりませんでした。いろいろ調べまして、そしてまた沖縄に行き来する中で、頑張ってきたことがありましたので、これの延長線上として更に、いわゆるもっと安定した県民所得に持っていけるために、今、全国でいけば最下位ですが、もうちょっとまで迫っていますから、下の方でいきますと。
 だから、ぜひ、九州がほとんど下の方を占めているんですけれども、やはり九州の中で中ぐらいに入れるようには最低頑張っていかなければいけない。そのためのプラスの条件と、また隘路というものはありますので、それも入れて検討していきたいというぐあいに思っているところでございます。

○屋良委員 そうすると、大臣、最初の國場委員の質問に対してのお答えで、単純な継続ということじゃないよ、まだそれは白紙だよという、その基本方針というのは、これまで一次、二次、三次、四次、五次とずっとやってきた振興開発、これを土台に新たな展開を模索しているよ、その中で製造業というのは非常に大きなウエートを占めています、その製造業をバックアップするためのいろんな施策を展開していきたいというふうな御意思なんでしょうか。

○衛藤国務大臣 そういうものも全部検証して、そして臨みたいというぐあいに思っています。
 ですから、今までどおりの振興計画になるのか、一体どうなるのかということについては今検証中でありますから、それは白紙です。しかし、更に将来の沖縄を考えたときに、私どもとしては、こういうことも大きな検討項目の中に入れてやっていく。
 あるいは、全国的に見ましても、沖縄は、大変申しわけないですが、医療の方はある程度行っているかもしれませんが、福祉の関係でいえば、必ずしも子供の貧困問題とか福祉関係でも上位にあるとは言えない問題がありますので、そういう問題も入れて、我々としては幅広く検討してやっていきたいと思っています。
 その中でのいわゆる企業のあり方としては、製造業の比率が余りにも低過ぎるので、そこに追いつけとは言いませんが、もうちょっとちゃんとしていきたいというぐあいに考えておりますから、それを今から調査をしてまいりたいというように思っております。

○屋良委員 時間なので終わります。どうもありがとうございました。