2020年7月8日 衆議院 安全保障委員会 屋良朝博
■イージス・アショアに関する損失額、賠償金について質問
質問内容についての要約
イージス・アショアに関する損失額、賠償金について質問。
議事録
201-衆-安全保障委員会-7号 令和2年7月8日
○屋良委員 立国社の屋良朝博です。よろしくお願いいたします。
まず一言、このたび、豪雨でお亡くなりになるなど被害に遭われました全ての方々に心よりお悔やみを申し上げるとともに、現地で頑張っていらっしゃる防衛省の方々には頑張っていただきたいというふうにお願いを申し上げさせていただきたいと思います。
イージス・アショアなんですけれども、やはり検証が必要であるということは、みんな認識は一つにしていると思います。既に払った金額を含む契約額、千八百億円でしょうか、そのうち支払い義務が生じているもの、あるいは今後請求される可能性のあるもの、損失額、賠償金、幾らなのか、現時点でわかっていれば教えてください。
○河野国務大臣 平成二十九年度から令和二年度までにおける、イージス・アショアにおける既に契約した金額は約千七百八十七億円、既に支払った金額は約百九十六億円でございます。
○屋良委員 賠償金とか損害とかという、そういった、今後、既に払った以上にこれから払うものがあるのか、それとも契約済み金額以上に何らか支払い義務が生じることがあるのか、その辺を教えてください。
○河野国務大臣 今後の日米間の協議によってくるというふうに考えております。
○屋良委員 算定がまだ整っていないということなのかということを思いますけれども、それは恐らく、契約を途中でとめてしまった以上、それは無傷ではいられないかというふうなことは思いますけれども、今回のそうした損害、損失が生じた場合の責任を誰が負い、防衛省はそれに対してどのように対応するのか、そういったことを明確にしていただくということは大変重要だというふうに思っております。
先ほども浜地議員もおっしゃっていましたけれども、地元が混乱していた。そして、ブースターについての住民説明は余りにも不誠実であったということは、大臣も、今後、どのような認識の変化があったのか、ブースターの落下地点についてですね、そういったことも明らかにすべきだというふうなお考えを示していただきましたけれども、これだけのことなので、私は、外部に検証委員会を設置して、国民に対する説明責任をしっかりと果たしていただく、そうすることによってまた新たな取組が生まれてくるものだというふうに思うんです。
防衛というのは、国民の信頼を失うと成り立たないものですよ。ずっとそうです。第三者委員会でしっかりと調査をするとか、クリアな形で、私たちにもわかるような形で検証するというふうな取組はいかがでしょう。大臣、よろしくお願いします。
○河野国務大臣 そのつもりはございません。
○屋良委員 そうすると、最初は、あれは二〇一八年の十月のことだったと思いますけれども、ブースターは陸上に落ちるかもしれない、だけれども、それは弾道ミサイルが落ちてくることによる被害と比べたら比較できないよという、たしか課長さんの発言に対して、地元の町長さんが怒った。翌日、施設内に落ちると。一晩明けると性能がこれだけ向上するのかといった、そんなこともこれまでの経緯の中であったわけです。これは、やはり私たちが、みんなが納得するような、そんな検証をすべきだと思います。
大臣、重ねてお伺いしますけれども、その説明の仕方、あるいは検証の仕方、今どういうふうな方針を持たれているのか。もしお考えがあるならお願いします。
○河野国務大臣 今、私の責任で確認をしているところでございます。
○屋良委員 どうも防衛省、この展開というか、この経緯とかを見てみると、疑問が多く持たれているという御認識を、やはり防衛省、皆さんが持っていただきたいというふうに思います。
レーダーについても、その選定過程においてはいろいろ議論があったわけですけれども、今回、配備を予定していたSPY7レーダーの配備計画についてちょっとお伺いします。
今後、契約をどうするのか。また、架空の議論かもしれませんけれども、イージス艦に搭載するといった話も聞こえてくるわけです。SPY7、今後どうするおつもりでしょうか。大臣、お願いします。
○河野国務大臣 NSCの議論も踏まえ、日米でしっかり協議していきたいと思います。
○屋良委員 大事なことを決めるときにNSCが先に来てしまうということが、ここ最近、多く見られるわけです。例えば防衛大綱でも、ずっと防衛省が所管して、防衛省がリードしてきたんだけれども、突然、官邸がそれを最終決定をしてしまうというふうな、どうも防衛政策の中で防衛省が当事者じゃなくなったんじゃないか、そんな指摘もされておりますけれども、どうですか、NSCと防衛省との関係性において、その当事者であるのかというふうな疑問が持たれているということについて、大臣、御所見を伺えればお願いします。
○河野国務大臣 防衛については防衛省が責任を持ち、外交その他、政府一体として考えなければならないことについてNSCがコーディネートする、そういう体制に変わりはございません。
○屋良委員 問題がどこでどのような形で検証されていくのかが、今のところ私たち、見えないわけです。
河野太郎大臣に一任するような形に今なっているというのが実は不思議で、そのような仕組みというのは本当にあってしかるべきなのかというのが、属人的な、人に任せるということなのか、それとも、一つの制度として、何か問題があったらそれを検証する仕組み、明らかにする仕組みがやはりあってしかるべきですよ。それをやらないでおくと、今のように、敵基地攻撃能力だのイージス艦にレーダーを搭載するだの、いろいろな、さまざまな声が聞こえてくる。
しかし、それはやはり問題があった。それをどのように検証して、どういうふうなプロセスで説明し、明らかにし、次の失敗を繰り返さないような仕組みをつくっていくというふうな議論がやはり必要であると私は思っておりますが、日本はそんな議論をどうもどこかですっ飛ばしているような気がするんですね。
その最たるものが、ここから私の議論したい点なんですけれども、辺野古の埋立事業、これにどれだけの議論があったのか、そしてなぜこれが唯一の選択肢になったのかということがさっぱりわからない現状があります。工期が十二年、費用が約一兆円にも膨れ上がった辺野古の埋立事業こそ、私は中止すべきだと思います。
イージス・アショアのことが議論になって、ブースターの問題でとまることになったというこの外形的な事実というのは、なかなかそれだけですとんと落ちないんですよ。なぜそんな議論になったの、そもそもの見通しはどうだったのと。先ほど小熊筆頭理事もおっしゃっていましたけれども、それって防衛省の見立ての誤り、見立ての能力の欠如だったんじゃないかというふうな議論になってくるわけですね。
それは辺野古だって同じですよ。十二年、一兆円、これは本当に費用対効果としていいのかどうかです。事業の合理性が今も維持されているかどうか、検証する必要が私はあると思います。大臣の御所見をお伺いします。
○河野国務大臣 普天間飛行場の危険性の一日も早い除去というのは、これはもう沖縄の県民の皆さんと同じ方向を向いている。しっかりと移設をし、一日も早い普天間飛行場の返還を実現したいと思っております。
○屋良委員 一日も早いという言葉と十二年という現実が余りにもミスマッチで、これを信じろと言われても、これは無理な話でございます。
抑止力を維持し続けるという議論についても、これから沖縄に残っていく兵力を見てみると、これは本当に抑止力たり得るか、実に疑問であるわけですね。
皆様に御提示させていただきました資料でございます。表と裏がありますけれども、右上に1と書いてある面には、海兵遠征隊の装備概要、そして主要な任務が書いてあります。
強襲揚陸艦三隻、これは長崎県の佐世保に配備されておって、沖縄にないんですね。だから、緊急展開するにしても、沖縄からでは出られない。しかも、オスプレイ十二機、F35戦闘機六機、CH53大型輸送ヘリ四機、AH1、攻撃ヘリ四機で、UH1、汎用ヘリが三機、そのぐらいのものですよ。それで運用されるのが約八百人の上陸大隊であるわけですね。
その裏面を見ていただきたいんですけれども、この遠征隊よりも一つギアアップした、一つ大きな遠征部隊、遠征旅団です。これは船が十五隻です。ないんですよ、日本に。
この遠征旅団がやる仕事はどういったものがあるかというと、地域で起きた局地的な紛争、小規模な紛争、それに対応するんですね。沖縄に残る海兵遠征隊は、紛争対応になっていないんです、紛争未満の事態に対応するような編成なんですね。
それをもって、日本の防衛がとか、日米同盟がとか、抑止力という、そんな議論がこの場で行われている。実に不可解です。実におかしいと思う。ちゃんとした検証をやはり私はやるべきだと思います。
大臣、余りにも不合理な議論が沖縄の民意を顧みないような論理として使われていると私は思っているんですけれども、どうでしょう、大臣、もう一度お伺いしますけれども、こういった事実関係を、先ほどもおっしゃいました、全てテーブルの上にのっけてみて、今私たちが突き進もうとしている十二年、一兆円、それが本当に合理的なのかどうか、もう一度考え直す、あるいは考えてみる。考え直すとは言いません、少なくとも検証してみる、それをやってみようとはお思いにならないでしょうか。大臣、お願いします。
○河野国務大臣 しっかりと、この辺野古移設計画を進めてまいりたいと考えております。
○屋良委員 いや、もうこれは一方的にしゃべるしかなくなってしまったんですけれども。
防衛省が言っている地理的優位性、この地理的優位性という言葉が防衛白書に出た。いつから出たかというと、一九九七年です。なぜかというと、一九九五年に少女暴行事件があった、だから、沖縄に過剰な負担を強いているということを政府として説明しないといけなくなった。だから、九七年から突然こんな言葉が出てきます。沖縄はアメリカ本国やハワイと比べて東アジアに近い、だから沖縄は地理的に優位なんだというふうな議論なんですね。
アメリカ本国とかハワイと比べて東アジアに近い。日本列島全て近いじゃないですか。なぜほかの県と比べないんですか。答弁お願いします。
○河野国務大臣 沖縄は、東アジアの各地域に近いと同時に、周辺諸国との間で軍事的緊張を高めない程度の一定の距離を置いています。また、南西諸島に位置し、特に沖縄本島は、南西諸島全体を包摂する範囲のほぼ中心部にあり、さらには我が国のシーレーンにも近いなど、安全保障上極めて重要な位置にあります。
南西諸島及びシーレーンの防衛を全うしつつ、東アジアの各地域の緊急事態に万全の体制を確保する見地からは、このような沖縄県の地理的特徴は他の都道府県では代替できるものではないと考えます。
例えば、海兵隊が九州や本州に駐留した場合、沖縄と比較して朝鮮半島に近くなる場合がある一方、台湾、東南アジアといった地域から遠ざかることとなると認識しております。
その上で、すぐれた機動性、即応性を有する海兵隊が、安全保障上極めて重要な位置にある沖縄を拠点として、そのプレゼンスを維持し、さらに、大規模作戦が必要となる場合には、来援する部隊の基盤となることによって、あらゆる事態に対して迅速かつ柔軟な対応が可能となる、このことが日米同盟の抑止力の中核となっています。
○屋良委員 距離的な話を、今、朝鮮半島と台湾海峡でしょうかね、台湾海峡をおっしゃいましたか、朝鮮半島でしたかね。その距離、台湾海峡と朝鮮半島、防衛白書はその二つの距離をよく出されるんですけれども、これは三角形の二辺なんですよ。その二辺の和を比較してみると、福岡の方が小さいし、佐賀の方が小さいし、わかりますか、言っている意味。
台湾海峡から沖縄の距離というのは近いじゃないですか。しかし、沖縄から朝鮮半島というのは遠いですよね。九州の北の方というのは、朝鮮半島からは近いけれども、台湾海峡からは遠い。だから、これは二辺の和を比べてみたらすぐわかります。これはグーグルアースを使わなくたってすぐわかることなんですよ。
これは本当に、そうした具体的な、実態的な議論をしていない。メルカトル図法の地図を広げて見て、ああ、こっちがいいなと、そういう観念的な話で、印象論で私たち刷り込まれているんじゃないでしょうか。
海兵隊が沖縄からどこか本土に移転したにしても、沖縄には嘉手納基地が残ります。嘉手納基地と嘉手納弾薬庫の面積を二つ合わせてみると、今現在本土にある主要なアメリカ軍基地の面積を全部合計しても、沖縄の負担が大きいんです。そのぐらいの、安全保障上の責任を負うぐらい、与党は誰か言うべきですよ。
そんな負担を一方に押しつけて知らぬふりする。そして、政権が飛行訓練を佐賀に持っていこうとしたときに、佐賀の人たちが反対したからやめますと。佐賀の民意は尊重し、沖縄の民意は無視していいんですかという議論なんですよ。そういう実態論、具体論、もうそこに徹していこうじゃありませんか。
私たちが沖縄の海兵隊、この31MEUのためだけにあの辺野古を埋め立てる。あり得ないですよ。あそこは自然の宝庫、たくさんのサンゴ礁が生息している。今、防衛省は七万四千体のサンゴ礁を移転しようとしています。埋め立てるとこれが死んじゃうから、移転しないとだめなんだよ、それがサンゴ礁の保護なんだと言っておりますけれども、実は、サンゴ礁の移植というのは非常に難しいものだというのが、調べてみるとだんだんわかってきました。
防衛省の辺野古環境等監視委員会第十二回会合、平成三十年二月八日ですけれども、移植後三年後の生存率が四〇%以上を目指すべきであり、それが不可能であれば移植自体が避難措置として適切でないというふうな発言が、専門家の発言が議事録に残っております。
水産庁にお伺いしますけれども、平成二十六年から平成二十八年まで沖ノ鳥島で行ったサンゴ礁の移植実験で、移植後三年後の生存率は何%だったか教えてください。
○山本政府参考人 水産庁では、沖ノ鳥島を対象とし、有性生殖を活用してサンゴを増殖させる技術開発事業を行っております。
この事業において、平成二十六年から三年間にわたって沖ノ鳥島で成長したサンゴの種苗を天然の岩礁に移植を行った結果、その平均生残率は、移植後一年で四四%、移植後二年で三四%、移植後三年で一七%となっております。
なお、平成二十八年から平成二十九年の間に、海水が高温となり多くのサンゴが死滅したところであり、この影響を除外すると、平均生残率は、移植後一年で五八%、移植後二年で四六%となっております。
○屋良委員 今、後半でおっしゃった数字は、無菌室で、高温にならないようなところ、ちゃんと守られたところで育てたら五五%とか何%とかになったということなんだけれども、天然でやったら一七%だったということですよね。それは、そういうことだと理解、まあいいです、一七%だったという数字をいただきましたので、それはそれでもう結構なんですけれども。
それはやはり、一般的に言ってそうなんですよ。二〇%を超えるということはなかなかない。沖縄県が一番多くサンゴの移植実験をやっているんですよ、この日本の中で。それでも移植の成功率はさほど高くない。ということは、緊急避難だから移植するよと言っているんだけれども、移植して死んでしまったら、全く緊急避難じゃなくて、これは自然破壊ですよ。それを伴うような、こういった自然破壊のコストもこの辺野古には含まれているということです。
だから、沖縄の民意のコスト、これを無視することの民主主義のコスト、そして、ちゃんと防衛を議論しないことのはかり知れないコスト、自然破壊のコスト、さまざまなコストを考えた上で、なお、この31MEUを日本に駐留させないと本当に日本は生きていけないのかどうか、しっかりと議論すべきだと私は思います。
サンゴ礁というのは、やはり生命の揺りかごと言われているぐらい、私たち人類にとってとても大事なものですよ。それが、今、沿岸開発などで世界で六割のサンゴ礁が危機に瀕していると言われておりますし、これから更に激しくなるであろう地球温暖化、自然破壊、人為的な破壊によって、二〇五〇年までには実に世界の九五%のサンゴが死滅するというふうな予測も専門家の中から上がっているんですね。
そういったサンゴを破壊しないでも、今なら間に合う、今なら、海兵隊の機能をもう一回検証して、地理的優位性ばかりに寄り添う議論はもうやめて、嘉手納だけでも十分な負担なんですから、安全保障を議論するのであれば、責任を持って、そうしたコストも含めて議論すべきだと私は思います。今ならまだ間に合うと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○河野国務大臣 先ほど答弁申し上げたとおりでございます。
○屋良委員 サンゴが壊れることについては、大臣、どうでしょう。生存率はそれほど高くないんですよ。高くないんだけれども、防衛省は、サンゴ礁を移せと、採捕許可を玉城デニー知事に申請している。沖縄県に申請している。沖縄県はちょっと保留にしているんですけれどもね。そうしたら、農水省が勧告だの指示だの出して、これは国が地方にやる物すごく強い権限ですよ。地方自治も無視したようなやり方ですよ。そういったことを強権的にやっているというのが今の政府じゃないですか。
具体的な議論はやらない、地理的優位性だの抑止力だの、先ほどイージス・アショアの話でも抑止力の議論がありました。抑止力って、本当にこの31MEUでどれだけ維持されるのか。今ある多くの部隊がグアムやハワイやオーストラリアに行く。抑止力と兵力というのは無関係なんでしょうか。全くわからない議論がどんどんどんどん既成事実として積み重ねられて、どんどんどんどん沖縄の意思は、民意は無視されている。それが本当に先進国の防衛だと、大臣、胸を張っておっしゃることができるでしょうか。お願いします。
○河野国務大臣 胸を張って申し上げております。
○屋良委員 それなら、この日本の防衛というのは激しく病んでいますよ。
海兵隊が沖縄に来たのは一九五六年です。一九五六年といえば、朝鮮半島で有事があって、この地域が、北東アジアが物すごく緊張していた、その真っただ中に南へ下がったんですね。何でですか。地域の反対運動があったからですよ。五〇年代から六〇年代にかけて安保闘争があった。その安保闘争の中で基地に対する感情が激しくなっていく。政治的な判断なんですよ、政治的な打算です。そこに、地理的優位性も、抑止力の議論も、恐らくなかったでしょう。あるはずがないです。
アメリカが決めて、アメリカが持ってきて、それで、少女暴行事件があって、慌てて防衛白書に沖縄の地理的優位性を書き込んだんです。それが実態であります。
これからも、沖縄の、辺野古の問題は恐らく、県内ではもちろん、私たちも、その合理性とか、本当にこれが必要なのかという議論をしていきますけれども、どうか大臣、その議論に真摯に向き合っていただきたい。そうじゃないと、日本の防衛政策はおかしくなっていきます。
ブースターが落ちる地点が一晩にして確定できるような、そんな議論の中で、何を信じろとおっしゃるのか。それを説明していく責任は、私は政府にあると思います。それを申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございます。