2023年11月10日 衆議院 国土交通委員会 屋良朝博

■国土交通大臣による辺野古埋立てにかかる代執行訴訟ついて

質問内容についての要約

国土交通大臣による辺野古埋立てにかかる代執行訴訟ついて質問。

議事録

 第212回国会 衆議院 国土交通委員会 第2号 令和5年11月10日

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○屋良委員 立憲民主党の屋良朝博でございます。先月、比例復活で戻ってまいりました。よろしくお願いいたします。
 大臣所信に触れながら、今般沖縄で大臣がなさろうとしている代執行についてお伺いしたいと思います。
 普天間飛行場を返還するために名護市辺野古で進められている埋立工事で、国交省は、先月五日、沖縄県を相手取り、代執行訴訟を提起しました。日本の行政において、地方自治の権限を奪う代執行は歴史上初めてのものとなります。沖縄県の玉城デニー知事は、この間政府との話合いを求めてきましたけれども、その糸口さえないまま裁判で被告席に立たされております。地元では今も多くの県民が反対している案件でございます。
 斉藤大臣は、所信で、小さな声を一つ一つよく伺い、国土交通行政に生かすと述べられておりましたけれども、沖縄の声は聞かないでもいい、そんなことなんでしょうか。
 この埋立事業は計画からかなりの年月が過ぎております。防衛省は埋立承認申請を二〇一三年三月に沖縄県に提出し、同年暮れに当時の知事から承認を取り付けました。しかし、その六年前の二〇〇七年に、防衛省は当該水域で音波探査を行っております。軟弱地盤が広範囲に広がっていることを確認し、当該地域の地質構造を精度よく把握するには情報が少なく、不確定さが残ることを報告書にはっきりと明記しております。資料一でお示しした関連記事でございます。
 軟弱地盤について、防衛省は承認申請の中で、地盤沈下は起こらないと説明しておりました。言葉を選ばずに言わせていただければ、これは詐欺と言われても仕方がないというふうに思うんですけれども、国交省は代執行でもってそれを無理やり抑え込もう、事態を収束させようとしているようにも見えます。施工前に地盤をしっかりと調べるよう、省令、告示、通達などの類いはないのかと国交省担当者からのヒアリングで私が尋ねたところ、ありませんという説明でした。それが本当であれば、日本の土木工事で同様な問題は未然に防げないということになりますけれども、制度的な瑕疵があるのではないでしょうか。
 大臣にお伺いします。


○斉藤国務大臣 公有水面埋立法における当初の出願時には、その時点で必要な調査を行い、その結果に基づき、工事の施工方法を設計の概要として提出し、都道府県知事が審査、承認します。
 出願時に地盤の情報を完全に把握するのは困難であることから、その後、新たな事情が判明した場合には、設計の概要の変更という形式で再度処理する制度となっております。
 地盤や地形の状況は、地点によって多種多様であり、かつ不確実性を伴うことから、当初の出願時に一律に詳細な調査を求めることは適切とは考えておりません。


○屋良委員 私の質問は、国交省が地盤をしっかりと事前に調べなさいというふうな、省令とか通達とか告示はありませんかという質問でございますけれども、それがないのであれば、今回のような問題に発展していくというふうな問題認識を持ってお伺いしたところでございます。そこをはっきり、あるのかないのかということをお知らせいただけますでしょうか。


○廣瀬政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のような具体的なガイドラインは国土交通省では有しておりませんけれども、先ほど大臣からございましたように、公有水面埋立法における設計の概要の位置づけについては、本年三月十六日の高裁判決においても同様の考え方が示されているというふうに認識しております。


○屋良委員 どうも私はちょっとこれはおかしいかなというふうな気がしますけれども、港湾の施設の技術上の基準を定める省令、港湾の施設の技術上の細目を定める告示によって、地盤はしっかりと調べなさい、土質試験の結果を基に、土の物理的性質、力学的特性などを適切に設定するものとするというふうな告示の内容になっています。それをしっかりやっていれば、今回のような設計の変更申請も、予算が膨大に広がることも、工期が長くなることもなかったのではないかと私は考えますけれども、その辺の認識、もう一度お願いいたします。


○廣瀬政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のような図書が存在することは承知をしておりますけれども、それをベースに各都道府県の方で審査をされているというふうに承知をしているところでございます。


○屋良委員 令和二年三月に防衛省の技術検討委員会というのが開かれております。その中で、省令と告示について検討委員から御発言があって、この存在を認識していたということは明らかなんですね。当然、それを知っていて、ちゃんと地盤の構造を調べる、その上で設計をする、当たり前じゃないですか、これは。何というか、こんな基本的な、基礎的な手順を踏まないで、今回の二〇一三年の申請が行われ、そして承認を取り付けているわけですよ。これは大きな瑕疵の中に流れていった事業ではないかというのが私の問題意識でございます。
 もう一度お答えを求めます。


○廣瀬政府参考人 お答えをいたします。
 防衛省沖縄防衛局において、今委員御指摘のような図書も参考に、適切な施工についての検討がされているというふうに認識をしているところでございます。


○屋良委員 それなら伺いますけれども、この省令、通達は誰が管理、運用するんでしょうか。お答えください。


○廣瀬政府参考人 お答えいたします。
 港湾局の方で所管しているというふうに認識しております。


○屋良委員 それなら、国交省は、今回のこのような事態に陥ったこと、地方の権限を奪ってまで代執行しないといけない事態になっているわけですよ。それをしっかりと港湾局が管理運営していれば、事前に防げたかもしれないじゃないですか。
 もう一度お願いします。


○廣瀬政府参考人 お答えいたします。
 繰り返しになりますけれども、公有水面埋立法の出願時においては、その時点で必要な調査を行い、その結果に基づきまして、工事の施工方法を設計の概要と提出して、都道府県知事が審査、承認していただいていると思ってございます。
 その過程におきまして、出願者の方で必要な検討を行い、承認に当たっては、承認者の方でいろいろな基準も参考になされているものというふうに認識をしております。


○屋良委員 だから、省令や告示に示されていて、ちゃんと地盤は調べなさいとは言っている。そして、その省令、告示の存在を防衛省も認識していた。しかし、何というか、今回の結果を見る限りにおいて、それがちゃんと守られていなかった。もしかしたら、これは省令、告示違反に当たるんじゃないかと私は思っておりまして、大変グレーな状態の中で、政府説明も軟弱地盤の上に構築されているような気がします。地盤の調査をせずに、情報不足を認識しながら見切り発車された埋立事業ではないでしょうか。
 資料二を御覧いただきたいと思います。
 これは、現状、実績とこれからの計画、一から六までの範囲に書いてある青い線なんですけれども、グラフなんですけれども、これは実績です。今終わっている段階、二〇二三年までに終わる段階。全体の土砂投入量で見ると、全体の一六%しか終わっていないんです。そして、年間二・七%しか進捗しないという実績なんですね。
 それが今、防衛省から出されている計画によりますと、ぐっと進捗率が一〇%を超えるという、ウルトラマンを呼んでこないとできないような、そんな計画になっているんですよ。しかも、地盤改良をしないといけない、七万本の砂ぐいを打たないといけない、こんなことで、本当にこれは計画として信憑性があるのかどうか。
 国交省はそれを基に今代執行をやろうとしていますよ、歴史上初めて。これは本当に許されるんでしょうか。仮に今のペースで進むと、これは四十年以上かかってしまう、そんな代物ですよ。
 沖縄県知事は、当初から着工は、着工から完成まで十八年もかかるんですよ、今六年過ぎていて、次の、軟弱地盤を含む広範な埋立工事が終わって、施設の供用開始まで十二年かかりますので、全体で十八年もかかるんですよということを認識していれば、知事の判断も違っていたのかもしれません。誤った情報に基づく誤った承認だったかもしれない。
 一連の手続はどうだったのか。大臣はどのようにお受け止めでしょうか。


○廣瀬政府参考人 お答えいたします。
 先ほど委員から御指摘のありました内容につきましては、変更承認の際に沖縄防衛局から知事に対して提出されておるものだと思います。また、それにつきましては、国土交通省も審査請求の過程で把握している数字になってございます。
 先ほどございましたように、公有水面埋立法に係る変更承認につきましては、所要の手続を進めておるところでございまして、この是正の指示というものが、本年九月四日の最高裁判決において、適法性が確定しているところでございます。
 それでもなお、知事が承認されないため、公有水面埋立法の所管大臣として、先月五日に、地方自治法に基づく代執行の訴訟を提起したものであり、今後も必要に応じて法律に基づく手続を進めてまいりたいと思います。


○屋良委員 適切だったという御回答であれば、なおさらです。
 今、代執行の手続を進めているこの埋立てに一体幾らかかるのか、そして工期はどのぐらいなのかということを国交省は確認した上でこの代執行の手続を進めているのかどうか。これは大変大きな疑問なんですね。
 この問題の責任を大臣が全て負うことになりますけれども、代執行をする前に、工期とか経費、それを国民の、納税者の前に明らかにした上でやらないと、これは大変な問題を残します。
 これは日本の行政史上初めてのことなんですね。国が地方の権限を奪って、そして、工事を進めていく。それをやるには大変慎重な手続が必要だと思いますけれども、大臣、その辺の手続問題についていかがお考えか、見解をお示しください。


○斉藤国務大臣 この件に関しましては現在係争中でございますので、大臣として、訴状に書いている以外のことを申し上げるのは、影響が出てまいりますし、控えたいと思いますけれども、先ほど局長からも申し上げましたように、公有水面埋立法の変更承認につきましては、昨年四月二十八日付で、沖縄県に対し、申請を承認するよう是正の指示をしており、この是正の指示につきましては、本年九月四日の最高裁判決において、その適法性が確定しているところでございます。
 今後も、必要に応じて法律に基づき手続を進めてまいりたいと思います。


○屋良委員 法律の下にある省令や告示など、それにしっかりと従っていれば今回のような事態には至らなかったというふうに、私はそんな感想を持っているんです。
 訴状で今回強調されているのが、政府はずっとこれを繰り返しているんですけれども、一日も早く普天間の返還、そして危険性の除去、そして日米関係の信頼性を高めていく、そのために辺野古が唯一の選択肢だと言っているんですけれども、危険性を認めた場合、普通であれば、公共施設ですよ、公共なものですよ、これは危険だねと言いながら、新幹線の危険性が認められるのを走らせるんですか。
 普天間の基地のすぐ近くには小学校があって、小学校のグラウンドにヘリコプターの窓が落ちたりもする事故を大臣も御承知だと思いますけれども、そのために国がやったことは、あそこにシェルターを造ったんですよ、運動場に。こんなような状態を、一日も早くといって、そして、いつ終わるか分からないし、工期も示せない、費用も示せない、このような公共工事が果たしてあり得るのかということです。
 そして、さらに、それに対して全てに蓋を押すように、代執行手続を今始めてしまっている。これは僕は大変な問題だというふうに思っております。
 そして、今、日米両政府が約束した事業なのだから、信頼関係を維持するためには進めるしかないという議論があることも承知しております。しかし、米軍からは、辺野古の滑走路、これは実は千二百メートルという短い滑走路なんですね、それに不都合や不便を感じているというふうな声も米側から既にもう出ている。これは資料三でお示ししているものなんですけれども、今月八日付の朝日新聞の記事です。在日米軍幹部の見解が報じられています。
 大臣、垂直離着陸が可能なオスプレイでさえ千五百メートル必要なんですよ。今、計画の千二百メートルプラス三百、三百のオーバーラン、これを常態的に使わないと、オスプレイすら運用できないという代物ですね。戦闘機を飛ばす場合、二千五百から三千、これは当たり前ですよ。にもかかわらず、千二百を提供して、日米関係の信頼だと言いつつ、アメリカ側は、米軍側は運用に支障が出るかもしれないという懸念すら示している。
 しかも、完成したにもかかわらず、完成後から向こう二十年間、供用開始から二十年間、地盤沈下が進むんですよ、しかも不同沈下が。そのたびに、暫時、ジャッキアップなり、滑走路の平たんを保つ作業をしないといけない、メンテナンスが続くんですよ。それを今一生懸命やっているというのが現状です。
 こんなぽんこつな滑走路を提供する合理性が一体あるのかどうか、それがとっても不思議でありまして、地元の民意を踏みにじりながら巨額の税金を軟弱地盤に沈めて、短い滑走路は米軍も喜ばない。国交省の省令、通達に違反している疑義すらある中で進められるこのモンスター事業、その責任を全て国交大臣が背負う、そのような覚悟はあるのか、もう一度、大臣、御見解をお示しください。


○斉藤国務大臣 まず、米軍関係者による発言についてはコメントする立場にありませんけれども、様々な御意見があることは承知しております。
 一方で、昨年四月二十八日付の是正の指示以降の経緯を踏まえ、公有水面埋立法を所管する国土交通大臣としましては、今後も、必要に応じて、法律に基づく手続を進めてまいりたいと思います。


○屋良委員 大臣、所信で述べられたように、沖縄県からも、とても小さい声かもしれません、聞き取りにくいかもしれません、しかし、もう一度、ちゃんと地元の意見を聞いた上で、そして、しっかりと事業の点検を行った上で、日本の史上初めてと言われる代執行、それをもう一度検討して、国民の前に事業の全容をつまびらかにしていただきたいという要望をして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。